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Researcher Clip No,02

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Researcher Clip - aug 31,2006 20年来の技術蓄積を基に現代の高速・大容量通信を支える光アクセスシステムを開発 山下和寿

情報通信研究所伝送システム研究部プロジェクトリーダー 山下和寿 イメージ

情報通信研究所伝送システム研究部プロジェクトリーダー。1985年入社。ワークステーションのグラフィックシステムの開発を経て、LAN/MAN機器の開発、光アクセスシステム/機器の開発など、通信分野の研究開発に携わる。GE-PONの開発では社内表彰の2006年度研究開発部門賞金賞を受賞。中学生時代には通信教育でラジオを自作していたという、生来のエンジニア。電気工学専攻。

01 研究内容 02 住友電工だからできること

研究内容

通信システムの進化を、研究者としてリアルタイムで経験
情報通信研究所伝送システム研究部プロジェクトリーダー 山下和寿 イメージ01

 私が所属する情報通信研究所や通信システム・機器の事業会社である住友電工ネットワークスは、1980年代からLAN機器に関する事業を展開してきました。私は入社8年後にLSI開発面からこの事業に携わるにようになり、以来、一貫して通信システム/機器の開発に取り組んでいます。80年代といえば、現在につながるカスタムLSIの黎明期。手作業で回路図を書くという、今となっては懐かしい設計手法も経験しました。

 今の仕事に非常に役に立っているのは、商品企画からLSIの設計まで、裁量範囲の大きなプロジェクトに関わってきた経験です。自前でプロセッサのようなものを作ったこともありますし、海外のLSIベンダとの技術交流も活発に行いました。驚異的なスピードで進化を遂げた通信技術において、その大半を肌で感じながら試行錯誤を繰り返してきたことは、GE-PONの開発を行ううえで私自身の強みとして大いに貢献してくれました。

高い機能性と低コスト性を備えたGE-PONでFTTHを支える
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 Fiber to the Home(FTTH)実現を目指す通信事業者に対し、そのソリューション提供者である私たちは、さまざまな方式の中からGE-PONを選択しました。ただ、採用に値する技術を確立するためには、いくつかの課題を解決する必要がありました。

  GE-PONは局側の1心の光ファイバを光カプラで分岐させ、32家庭に分配します。分配のロスを補うため、大きなパワーバジェットを確保することが1つの課題でした。弊社は光デバイスやモジュールの事業も行っており、その研究部門と一緒になって高性能なアンプを開発し、この課題をクリアしました。垂直統合は弊社の戦略の1つであり、他部門との連携がスムーズにできました。

といっても世の中は水平分業の時代。社外のパートナーをうまく活用して、効率的に開発することは基本です。GE-PONの通信を司るLSIには海外のベンチャー企業が開発したものを採用しています。しかし、直接のお客様である通信事業者のやりたいことと、採用したLSIでできることにはギャップがありました。また、初期のLSIには不具合がつきものです。そんな事情にはおかまいなく、お客様が利用したい時期は設定されています。我々はお客様にソリューションを提供することが目的ですので、LSIベンダに対策を要求するだけでなく、独力でできることは可能な限り実施しました。具体的に言うと、ベンダ製LSI の周囲に我々が開発したLSIを配置し、そこで機能不足や不具合を補いました。

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低コスト化に関しては、元来からコストパフォーマンスに秀でていたイーサネット系技術を使うことに加えて、徹底的に経済性を追究しました。例えば、それまで主流であったB-PONとは符号やタイミング特性がかなり異なります。特殊な部品を使うことなく、汎用部品を使いこなすことによって、経済的な送受信回路を実現しました。また、研究者が製造部門と綿密なコミュニケーションを図り、調整や検査時間を短くして製造コストを下げるといった工夫も凝らしました。

住友電工だからできること

エポックメイキングな技術が次世代のエンジニアを魅了し、新技術の源泉となる
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 GE-PONに実装した技術は、決して一朝一夕に実現できるものではありません。LAN時代から技術を積み重ね、それぞれの技術の特性をうまく次世代技術へと引き継いでいった結果です。GE-PONを選択し、いち早く標準化への参画を行ったことも、通信事業で実績を重ねる中で得た、時代を読み取る力のたまものと言えるでしょう。また、GE-PONのLSIを社外調達していることは前述しましたが、実は、開発当初はLSIまでも垂直統合を目指して自社開発していました。その頃はLSIベンダも開発途上で、使おうにも物がなかったですからね。原理試作的なものを開発した後、切り替えたのですが、この過程で得たGE-PONに対する深い理解がなければ、補助LSIの開発は難しかったと思います。

 住友電工は、「前向きな失敗」に対して寛容な社風があります。時代の変化や顧客ニーズの一歩先を感じ取り、自分の研究テーマを活かせる技術には積極的にチャレンジさせてくれるのです。そして、たとえそれが商品化にまでいたらなくても、きちんと評価してくれるのです。GE-PONの独自LSI開発はその例と言えるでしょう。「失敗」か「アプローチ」かは見方が分かれるかもしれませんが。それはさておき、マネジメントする立場にいる人間として、この社風は若手へと伝えていきたいですね。

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 長い歴史の中で、その時代ごとのエポックメイキングな技術を生み出してきたことも現在の技術力の源泉になっています。例えば、弊社は日本で始めてワークステーションを開発した会社でもあるんです。この技術に憧れて、当時、たくさんの若手技術者が入社しました。彼らは時代を経て、さまざまな技術分野で活躍しています。通信事業でも、そんな人が数多くいるんですよ。ある意味で、GE-PONの成功は、ワークステーションの成功に端を発していたと言えるのです。

 GE-PONも、現代の通信を支える画期的な技術です。この技術に興味を持って住友電工に入社した人が、将来、新たな技術を確立するー。そんな、「技術のスパイラル」を実践していけるのは、この会社ならではの強みだと思います。

専門用語紹介

▼ GE-PON
Gigabit Ethernet Passive Optical Networkの略。ギガビットイーサネットの伝送方式を用いた受動型光ネットワーク。IEEE802.3標準

▼ B-PON
Broadband Passive Optical Networkの略。ITU-T標準

▼ パワーバジェット
送信側の光出力レベルと、受信側において信号再生可能な光受信レベルとの差

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