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    STEP3 住友電工の社会への成果プロジェクトストーリー

マイナス240度の超常識世界を制御せよ。冷凍機冷却型高温超電導マグネットシステム開発プロジェクト

マイナス240度の超常識世界を制御せよ。冷凍機冷却型高温超電導マグネットシステム開発プロジェクト

磁場強度の変化速度を飛躍的に高速化。

超電導とは、ある特定の物質を極限まで冷やした時、急に電気抵抗がなくなり、同じ断面積の銅と比べ、実に数百倍の電流を損失ゼロで流す現象のこと。
住友電工は1988年以来、他分野で培った技術ノウハウを活かしながら、高温超電導線材やその応用製品の開発を進めてきた歴史を持っている。1997年には、高温超電導では世界最高性能となる7テスラ(磁束密度の単位。1テスラ=1万ガウス)を発生させる冷凍機冷却型マグネットを開発し、新技術事業団(現JST)に納めた実績がある。
その後、同様の超電導マグネットシステムを手がけたものの、主要部品である高温超電導線の性能が低いことから、マグネットシステムの性能もあまり向上せず、拡販には至らなかった。
加藤は、この超電導開発の初期から携わっているコアメンバーの一人で、20年を超える年月のなかで培った高い知見は住友電工でも指折りである。その加藤のもとへ舞い込んできた新たなミッションが、磁場強度の変化速度を飛躍的に高速化したマグネットシステムの実現だった。
マグネットシステムは、永久磁石の性能を測る装置に用いられ、磁場強度を上げたり下げたりしながら、それに対する永久磁石の反応で性能を測る仕組みになっている。
その上げ下げのスピードを速くすることによって、測定のさらなる精度向上やスループット向上を図るというのが、今回のプロジェクトのミッションだった。

世界中の文献による検討調査を実施。

開発は、加藤が机上で全体の設計を検討し、上野がそれを組み立てて実験を行い、基礎データをとるという役割分担で進められた。
今回の開発で一つのポイントとなったのは、交流運転を前提とする点だ。高温超電導線は直流では損失ゼロだが、交流では損失が発生してしまう。
それがどの程度の影響を及ぼすのか、発熱量の計算が必要とされたが、社内にはその設計手法が確立されていなかった。そこで、加藤は世界中の文献をあたり、関連する技術情報を収集。
それらの検討調査を行う一方で、自分のアイデアをそこに盛り込んだり、大学との共同研究を行ったりして、設計を組み立てていった。
そうして導いた仮説を、上野が実験で確認。
その結果、飛躍的に精度を高めた設計手法を確立することができた。
一方、マグネットの基幹部品であるコイルの構造設計にも苦労した。高い電流密度でも耐えられるよう限界試験をしていたところ、予期していなかった箇所で異常が発生することがわかった。これがもし解決できなければ、コイルの設計自体を一から考えなおさないといけなくなる。納期を考えると、それは致命的だ。そこで上野はコイルを分解し、異常の原因を究明。いろいろと調べた結果、コイルの組み立てにおける積み重ね方と、圧力のかけ方が鍵を握っていることをつきとめた。コイルは、組み立てるのは通常の室温でも、実際に使用するのはマイナス240度の世界なので、約270度の温度差がある。コイルは冷却されると縮む性質があるので、上野は、組み立て時にどれくらい圧力をかけると、マイナス240度で望ましい状態になるかを、さまざまなシミュレーションを通して検討した。適正圧力の算出法は極めて難しく、かつモノによってばらつきも出るため、シミュレーションは難航を極めたが、さまざまな試行錯誤の末、何とか求められる性能を出すに至った。

世界最先端を一歩前進させた快挙に、世界が注目。

とにかく前例がないなかで進めていった、世界最先端への挑戦。さまざまな難所を乗り越え、ついに加藤らは2011年1月、冷凍機冷却型高温超電導マグネットシステムを完成させ、全世界へ向けて発表した。関連業界の反響は想像以上だった。従来の金属系超電導線材を用いた同システムに比べ、加藤らが開発したシステムは磁場強度変化速度において、実に約10倍の高速化を実現したものだ。さらに、クエンチレス、高速励減磁という大きなメリットを活かせば、従来とは異なる分野への適用も可能となる。
現在すでに加藤のもとへ大型の引き合い案件が舞い込んでおり、メンバーらはその開発に着手している。今はまだ製品が一般的に普及していない高温超電導分野。加藤らは今、その市場を立ち上げ、広げていく挑戦を続けている。

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