STEP毎に読み進めていく事で理解度がより高まります
    STEP3 住友電工の社会への成果プロジェクトストーリー

10カラットの“人工”ダイヤモンドを作り出せ!合成ダイヤモンド開発プロジェクト

10カラットの“人工”ダイヤモンドを作り出せ!合成ダイヤモンド開発プロジェクト

1カラットの黄色い結晶から、10カラットの無色透明の結晶へ。

住友電工の主軸製品だった電線の製造には、「線引きダイス」という工具が用いられている。1970年頃、その材料である超硬合金に替わる素材として、住友電工はダイヤモンドに着目。そこから、住友電工の合成ダイヤモンドの歴史は始まった。1980年には、約1カラット・約5-6mmの単結晶ダイヤモンドの合成に成功し、数年後には世界で初めてその量産を実現した。
この後、角谷は住友電工に入社。大型化と高純度化をミッションに、合成ダイヤモンドの研究開発に携わることとなった。そして角谷は1990年、10カラット・約10mmの大きさを誇る大型単結晶ダイヤモンドの合成を可能にした。しかし、その色はといえば、いかにも合成といった黄色。そこで、原因の窒素不純物を完全に除去する技術を開発し、2000年ごろ、
角谷は無色透明の大型の高純度結晶の合成に成功する。15年に及ぶ粘り強い開発によって、1カラットの黄色い結晶を、みごと10カラットの無色透明の結晶にした。
この結晶の純度や結晶性は、結晶学的には天然ダイヤモンドの最高級品をも大きく超える。この高品質な合成単結晶ダイヤモンドの出現によって、超精密工具など従来のダイヤモンド工具の特性を向上させるだけでなく、光学部品や分光素子、放熱基板などの新用途への展開を可能とし、高性能半導体素子や固体レーザー、生体関連材料など、さらに大きな夢のある展開も見えてきた。

たった一人の単独研究から、国の助成事業へ。

一方で、角谷はもっと新しい材料探索を目指し、直接変換焼結という新しい合成プロセスによって作り出す「ナノ多結晶ダイヤモンド」の開発を進めていた。当初は会社に認められず、角谷がたった一人単独で進めるという、アンダーテーブル的な取り組みだった。2000年ごろからは大学と共同で探索を続け、2003年、あるブレイクスルーをきっかけに、1mmの多結晶を作ることに成功。そして、この多結晶は単結晶ダイヤモンドを超える硬さを有することを見い出した。大学と共同で論文をNature誌に発表したところ、大きな反響を呼び、新聞各紙に記事で取り上げられた。
その後、2005年には1cmに及ぶ多結晶の合成に成功し、国の助成事業として認められるとともに、社内でも正式にプロジェクト化され、佐藤と原野がメンバーとして加わった。
佐藤が担当したのは、試料の大型化とその量産のための生産技術だ。従来とは比べものにならない高温・高圧での製造条件とあって、装置開発も、新製造プロセスの開発も、困難を極めた。世界初のダイヤモンドを作るためには、世界初の製造装置が必要となる。世界でまだ誰も成功していない技術の創出に向け、佐藤は失敗を繰り返しながらプロセスの精度を高めていった。
一方、原野が担当したのは、素材の分析・評価だ。優れた特性を備えたきれいな多結晶を作るため、失敗作である試料のさまざまな特性を分析・解析して次へつなげる。その繰り返しが数年にわたって続いた。

世界初の驚愕ダイヤモンドの完成。そして「超ダイヤモンド」へ。

目立った成果が得られることなく数年間が過ぎ去っていったが、角谷らプロジェクトメンバーたちの心は決して折れることはなかった。胸の奥にあったのは、「いつか必ず成功する」という確信だ。実は、多結晶ダイヤモンドの合成には、直接変換焼結だけでなく、ガスを用いて作り出す別プロセスも存在する。周りから、「ガスからの合成を試してみてはどうか」と進言されたこともあったが、「緻密で強靱な多結晶は直接変換焼結でないと得られない、難しいがきっとできるはず」と信じ、角谷は超々高圧と直接変換の技術開発に集中した。角谷の技術者としての信念だった。
そして2010年、角谷らはナノ多結晶ダイヤモンドの実用化開発に、世界で初めて成功した。入社以来、一貫して合成ダイヤモンドの開発に心血を注いできた“ミスター・ダイヤモンド”角谷を中心に、世界初へ向けたチャレンジを続けてきた技
術者たち。その奮闘が、みごとに大きく実を結んだのだ。単結晶ダイヤモンドを凌駕する硬度と強度を誇るこの画期的な材料は、次世代の精密加工用工具素材として産業界の期待を集めている。しかし、これでプロジェクトは終わったわけではない。さらに高い品質を持つダイヤモンドへ。そして、本物のダイヤモンドを超える「超ダイヤモンド」の創出に向けて、メンバーたちはすでに次のチャレンジに着手している。

  • この世界に、安心・安全なエネルギーを
  • 新たな技術で、世界の電力インフラを支える
  • マイナス240度の超常識世界
  • 中国情報化の巨大市場
  • 世界の水を美しく
  • 10カラットの“人工”ダイヤモンド
  • 超硬ドリルの未来を賭した新工場