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    STEP3 住友電工の社会への成果プロジェクトストーリー

新たな技術で、世界の電力インフラを支える。NEMOプロジェクト

新たな技術で、世界の電力インフラを支える。NEMOプロジェクト

次世代の送電技術を担う、画期的な新製品。

近年、洋上風力発電所や国家・地域間連系線の建設が活発な欧州。そこでは、高圧直流海底・陸上ケーブルの需要が急増している。中でも架橋ポリエチレン絶縁(XLPE)ケーブルは、従来の油浸紙絶縁ケーブルと比較して、許容運転温度が高くケーブルをコンパクトにできる点、環境保全性に優れている点から大きな注目を集めている。
住友電工グループでも、欧州の大規模な市場への参画を果たすため、直流用ケーブルの開発が急務となっていた。しかし、欧州の市場は地元企業の独占状態が長く続いており、その牙城を切り崩すためには、より運転温度が高く、コンパクトでコストも安い革新的な製品が必要だったのである。
かつてない製品で新たな市場を切り拓く。その重大なミッションを担ったのが、ジェイ・パワーシステムズ日高ケーブル部の佐藤立樹だ。新たな導体の開発と設計、製造過程における品質の安定化に至るまで、幅広い業務を任された。
「受注が難しい欧州の案件に対して、これだけの責任を与えられたことを意気に感じていました。とくに苦労したのが新たな導体の開発。設計書どおりに、思うようなモノをつくることができず、頭を悩ませていました」(佐藤)
初めての構造に試行錯誤を繰り返し、製造に必要な設備をゼロから構築する……。かつてないモノづくりには想定外のできごとがつきもの。その道のりは実に困難なものだったという。佐藤は、さまざまな角度から検証を行い、時には退職した先輩技術者を訪問するなどして、理想の製品を徹底的に追求したという。
「運転温度が高く、環境にも優しい。次世代の送電技術を担う製品ができたと思います。そうした成果を上げられたのも、担当工程の主任・主代、製造現場をはじめとした周囲の皆さんのご意見・バックアップがあったおかげです。当社の強みである絆の力を再認識することができましたね」(佐藤)

一丸となって、魅力ある提案を。

新たな技術の確立を経て、住友電工グループは欧州案件への入札に参加することとなった。イギリス南東部のケント州と、ベルギーのゼーブルージュの交流直流変換所を結ぶ連系送電線の建設である。その全長は141.5km(海底区間130km、陸上区間11.5km)。総額700億円というビッグプロジェクトだ。同案件におけるケーブルシステムの設計と応札全体のとりまとめを担当した伊木剛は、そのポイントをこう話す。
「コスト面でいかに魅力のある提案ができるかが重要なポイントでした。原価低減につながるケーブル設計を実現した上で、開発内容や製品の製造方法についても担当部署と検討を重ねていきました」(伊木)
こうした新規プロジェクトに参加する面々は、多忙な通常業務をこなしながら、限られた時間で多くのアウトプットを出すことが求められる。プロジェクトの推進には大きな苦労が伴ったそうだ。
「大幅な原価低減に成功し、受注に結びついたのは、各メンバーが本気になってくれたから。私自身もプロジェクトの重要性を認識してもらえるよう、個々の関係者と顔を合わせて対話を行い、こちらの意図、熱意を伝えていきました。難しい課題に対して、一丸となって取り組むことができなければ、課題を解決することも、受注することも叶わなかったはずです」(伊木)

プロジェクトの成功に向けて、挑戦は続く。

かくして、住友電工グループは、英国National Grid社とベルギーELIA社の合弁会社であるNEMO Link Limited社から、両国を結ぶ高圧直流送電ケーブルシステムを受注。直流XLPEケーブルでは世界最高電圧となる±400kVクラスのケーブル設計・製造を担当し、工事・竣工試験・試運転を経て、2019年に引き渡す予定となっている。今後、行われるケーブルの敷設工事を担当するのは、電線・機材・エネルギー事業本部の富岡聡。プロジェクトの成功に向けては、まだまだ困難が待ち受けているようだ。
「直流の高電圧に耐えられる絶縁材料や中間接続部、端末接続部の設計・製造が課題であるほか、施工面では海底ケーブル部分が約130kmと長尺であり、中間部で接続し、海底に沈設する必要がある。当社としても初めてのチャレンジであり、やりがいのあるプロジェクトだと考えています」(富岡)
現在は、製造開始前の各種試験線路組み立てと、そのスケジュール管理、現地工事設計が行われているところ。社内の各部署や社外協力会社、イギリス-ベルギー現地のコーディネーターらと連携をとりながら、多忙な毎日を過ごしている。
「海底ケーブル敷設はスケールが大きく、影響力の大きい仕事。まだまだ先は長いですが、世界に必要不可欠な電力の供給に貢献できることが大きな喜びになっています。船舶の知識など、未知の世界を知ることができることはとても面白いですし、様々なプロと一緒に仕事をすることで、大きな刺激を与えられています」(富岡)
住友電工グループは本プロジェクト以外にも、欧州向けの海底送電ケーブルを3件受注しているが、今回のプロジェクトは、欧州の最重要社会インフラの一部である国家間の連系線建設に、アジアのケーブルメーカーが初めて採用されたものだ。彼らの活躍は、同グループのさらなる飛躍へとつながっていくことだろう。

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