プロジェクトid 社会課題への挑戦 世界の社会インフラを支えるPC鋼材の持つパワーとその可能性

新名神プロジェクトを支えたPC鋼材技術 〜武庫川橋・安威川橋・楊梅山高架橋〜

楊梅山高架橋(写真提供:三井住友建設)

1,000tの高強度PC鋼材をタイムリーに供給せよ

32基の移動作業車による 同時施工という超大型工事

楊梅山高架橋は、上下線とも橋長1,100mを超える長大橋梁である。この施工現場は安威川橋・武庫川橋と同じく移動作業車を使用した張出し施工であるが、他とは異なる特有の大きな課題があった。設計施工を担当したのが三井住友建設(株)片健一氏である。

「本橋では、通常は10基前後使用する移動作業車を最盛期に32基投入、同時に施工するという超大型工事でした。同時施工においてトラブルは許されません。ある現場で工事がストップすれば全体の工程に影響を及ぼすからです。現場の施工能力が試された工事でした。そして工事進捗に欠かせなかったのが、PC鋼材の的確かつ迅速な供給だったのです」

三井住友建設(株)片 健一氏
三井住友建設(株)片 健一氏
ドラムに巻かれたPC鋼材は橋梁へと挿入される(写真提供:三井住友建設(株))
ドラムに巻かれたPC鋼材は橋梁へと挿入される(写真提供:三井住友建設(株))

ジャストインタイムで施工現場に高強度PC鋼材を届ける

PC鋼材の的確かつ迅速な供給は絶対的使命だが、大規模な楊梅山高架橋では、高強度PC鋼材の使用量が約1,000tにのぼった。住友電工の高強度PC鋼材の総出荷量が10年間で合計約3,000tであったことからもその規模がうかがい知れる。加えて、PC鋼材は生産し輸送すればいいというものではなかった。それだけの物量を保管しておく場所が施工現場にはないため、「必要な時に必要な量」を供給する必要があった。文字通り、ジャストインタイムの対応が求められたのだ。それに応えるため、陸上輸送における不測の事態も考慮し、綿密な生産・輸送計画を立て、施工の進捗状況を見極めながらデリバリーをコントロールした。

「見事に応えてもらいました。両社のこれまでの信頼関係の賜物と感じています。今後の課題は施工現場のPC周辺機材の小型・軽量化。大規模工事になれば全体の物量が増えますから、それが、施工現場の生産性向上をもたらすトリガーにもなると思います。住友電工と共に、施工現場をドラスティックに変えるイノベーションを起こしていきたいと思っています」(前出・片氏)

新名神高速道路の橋梁プロジェクトを支えた住友電工の若手社員

左から
岸本 祐香(高強度PC鋼材の新技術開発を担当)
「今後も生産技術の革新や新製品開発に取り組んでいきます」
中上 晋志(PC鋼材を定着させる部品の設計開発を担当)
「PC施工の技術向上に貢献する新たな技術を生み出すのが目標です」
中谷 尚史(楊梅山高架橋の営業と製品管理を担当)
「橋脚ができたときから携わっていますから感慨もひとしおです」
田中 秀一(高強度PC鋼材の生産技術・量産化を担当)
「市場への大幅な普及に貢献できたことに、技術者としてのやりがいを感じます」

ファイバが橋梁の健全性を見守る
〜復興支援道路・月舘高架