開発ストーリー

ポアフロン精密濾過膜モジュール

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04.望みを託したテストが不発。新コンセプトで再出発へ

水処理という新たな用途が見えたものの、そこはメンバーにとって未知の領域。それどころか、住友電工にとっても未着手の分野だった。社内にノウハウや情報はない。サンプル品を手にした森田は、ニーズ調査のため自ら水処理装置メーカーを訪ね歩いた。
「ほとんどのメーカーがまともに取り合ってくれませんでした。というのも、高価なPTFEを水処理に使うなど、常識はずれな発想だったから。汎用材であるポリエチレンでこと足りているのに、なぜPTFEを?という反応がほとんどでした」
しかし、ただ1社だけ興味を示してくれたメーカーがあった。話は順調に進み、フィールドテストを行うことに。ところが、結果は惨憺たるものになってしまう。
ポアフロンの特性の1つは、高気孔率による高い透水性。多くの水を流せ、効率的に水を処理できるはずだった。にもかかわらず、テストでは予想外のスピードで目詰まりを起こし、流水量は従来品以下という結果に。一縷の望みが、潰えた……。

05.活用したのは、電線メーカーとしての顔

ここで森田は、新たなコンセプトを打ち立て、再起を期す。
それまでの試作品は、中空糸膜全体が均一な膜構造だった。ここでは、孔径を小さくすると気孔率も小さくなり、流量が減るという弱点を持っていた。そこで、孔径が大きく透過性のよい中空糸膜の外側にさらに孔径が小さく極薄の同じくポアフロンの層を設けて一体化させるという、複合構造を新たに採用したのだ。ろ過層となる外側のポアフロンは孔径0.1μm、支持層となる内側は孔径2μmで気孔率は80%。PTFE複合中空糸膜と名づけられたこの構造は、流量と強度を高い次元で両立させた。後にさらなる改良が重ねられ、流量は従来の品の約4倍、コストは1/4にまでなる。もちろん、メンバーの手による住友電工オリジナル技術だ。
この技術をもたらしたのは、住友電工の電線メーカーとしての顔でもある。内部の金属線と、外部の絶縁用被膜などからなる電線は、PTFE複合中空糸膜の構造と重なり合う。新コンセプトによる試作品作りの段階で、メンバーは電線事業部に足を運び、電線の作り方を学んだ。また、装置も借り受けて自分たちで製造を行い、量産技術への道筋もつけた。
「『素人が何を突拍子もないことを言い出すんだ』と、最初はいい顔をしてもらえませんでした」と言って森田は笑うが、この発想と行動がなければ、ポアフロンによる水処理技術は停滞していただろう。そして、もし住友電工が電線メーカーでなければ、斬新なアイデアさえ生まれていなかったのかもしれない。

06.韓国からやって来たキーパーソン

水処理技術が大きな前進を遂げたころ、1人の韓国人商社マンがメンバーのもとを訪れた。彼が目指していたのは、ポアフロンの韓国国内での販売。しかしメンバーは、進展中の水処理技術を強く推薦する。「そこまで言うなら」と彼も提案を受け入れ、韓国での営業活動に乗り出すことに。
「車にサンプルの水処理モジュールを積み込み、韓国の北から南へと、メーカーを訪ね歩いてもらったんです」
その結果は、予想以上の反響だった。というのも、韓国では下水処理が国を挙げての課題となっていたから。水処理装置メーカーも技術開発を進めており、そこでは競合他社のモジュールがテストされていた。しかし、メーカーを満足させる性能には達していなかった。そんな中に持ち込まれたポアフロン水処理モジュール。メーカーは大いに興味を持った。そしてその日はやって来た。韓国の大手建設会社である大宇E&Tが、シンピョンに建設する下水処理場他数箇所に住友電工の水処理用ポアフロン膜モジュールを採用することを決めたのだ。

07.ビッグプロジェクトに参画。モジュール開発を成し遂げる

シンピョン下水処理場含め、採用が決まった下水処理の必要処理能力は日量合計約10,000tクラス。当然、そこに用いる水処理モジュールも試作品レベルとは規模が違う。また、微生物を使った下水処理方法との組み合わせも最適化を図らなければいけない。実機搭載に向け、なすべきことは山積していた。
「当初、処理できる流量は目標に届かなかったんです。この原因は水処理用の中空糸膜の性能そのものではなく、中空糸膜の配列など、全体の組立構造にありました。どのように中空糸膜を配置すれば処理能力を最大化できるか。手作業による試行錯誤を繰り返し、最適な構造を探していきました」
この過程で大きな問題となったのは、評価を行うための排水は韓国の実際のものを使わなければいけなかったことだ。日本でサンプルを作っては現地へ運んで実験を行い、それを持ち帰って再び日本で分析を行うというサイクルを繰り返した。開発のデッドラインが近付いてくると、通常の運搬方法で発生する時間のロスさえ惜しかった。そこで森田自らがモジュールを抱えて飛行機に乗り込んだ。
「期限と性能が定められ、何が何でもそれを達成しなければいけない。とてつもないプレッシャーの中で、毎週のように韓国に通いました」
そんな森田を先頭に、メンバーは分析と改良を重ねる。「心身ともに鍛えられた」というこの時期を経て、ついにポアフロンは実機搭載の水処理モジュールとして完成した。

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