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第2回 ステークホルダー・ダイアログ

第2回 住友電工グループ ステークホルダー・ダイアログ

ステークホルダー・ダイアログ第2回となる今回は、住友電工 東京本社において、企業の環境経営について卓越した知見をお持ちの3名の有識者の方にお集まりいただき、住友電工グループの効果的かつサスティナブルな環境経営について意見交換を行いました。今回いただいた貴重なご意見を環境経営のさらなる推進へとつなげていきたいと考えております。

意見交換の様子

開催概要

開催日:
2011年3月7日(月)

場 所:
住友電気工業(株)東京本社

(左から)上妻義直 様 森澤みちよ 様 田中定裕 様
(左から)
上妻義直 様
森澤みちよ 様
田中定裕 様
ご参加いただいたメンバー(50音順):
上妻 義直 様(上智大学経済学部教授)

専門研究分野は環境会計論および国際会計論。環境省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、内閣府、日本公認会計士協会等のCSR・環境関係の検討会・研究会等で座長・委員等を歴任。

田中 定裕 様(トヨタ自動車株式会社 環境部長)

トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車株式会社)入社。
グローバル調達企画室統括室長、CSR・環境部CSR室グループ長等を経て現職。

森澤 みちよ 様(CDP ジャパンディレクター)

シティバンク等で金融機関間決済リスク削減業務に従事した後、2003年より環境学の研究を開始。CDPの2006年の世界的な対象企業拡大に伴い、日本担当としてCDPに参加する。東京大学博士(環境学)


ファシリテーター:
福島 隆史 様(株式会社サステナビリティ会計事務所 代表取締役)

住友電工出席者:
野田 茂(常務取締役)
安全環境部 小原 明信(部長) 松友 俊雄(省エネルギー推進室長)
人事総務部CSR推進室 得田 和徳(室長) 吉田 竜郎(主幹) 三橋 一勝(主査)

スケジュール

開会のご挨拶、趣旨説明→住友電工グループの環境経営に関するご説明→意見交換→総括と閉会の挨拶
会場の様子

意見交換

テーマ:住友電工グループのさらなる環境経営の推進に向けて

福島:

住友電工グループの環境経営についてご興味を持たれた点について、まずはテーマ出しをお願いできればと思います。


住友電工グループの環境経営に問いたいこと

田中:

環境の具体的な方針が事業活動そのものに浸透していて、着実な活動をされているなという印象です。その一方で、社会に対して本業を通じてどのように貢献されているかの説明が少ないように思います。住友電工さんの本業を通じた社会の持続的発展への貢献は今後どのようなところが中心になるのかお聞かせ願います。

田中

森澤:

私が所属しているカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)※はイギリスのNGOであり、住友電工さんもCDPの情報開示にご協力いただいています。私は国連責任投資原則(PRI)の日本マネージャーも兼務しているので、様々な側面から御社の取り組みを拝見しています。特に国内での他社を巻き込んだモーダルシフトの取り組みは良いと思います。他の企業へのベストプラクティスとしてさらに積極的に開示してもらいたいですね。また海外での温室効果ガス排出量増加への対応、将来の環境法規制への取り組みについてもご説明いただければと思います。

森澤

上妻:

他の素材メーカーと比べても住友電工グループの環境マネジメントは進んでいると思います。2010年の報告書においてコネクティッドレポーティングフレームワーク(CRF)※に取り組まれているのは日本では初めてではないでしょうか。今の環境マネジメントは、サプライチェーンレベルで、ライフサイクルレベルでどこまで取り組むかということが問われています。そこをどう考えておられるのか知りたい。

上妻

野田:

環境経営に関して、社内にあるデータはできるかぎりオープンにしているつもりです。でも結果として分かりにくい開示になっているかもしれません。もっと対外的にも分かりやすく伝えていかなければ。


森澤:

これから海外の部分のディスクローズが強化されることについて、100%できていないから出さないではなく、今何%できている、今後何%まで高めたい、などという情報として出されていってよいと思います。


※カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)
機関投資家が連携し、企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量の公表を求めるプロジェクト

※コネクティッドレポーティングフレームワーク(CRF)
近年英国にて開発された、財務情報と非財務情報を関連づけて開示する統合型報告スキーム

環境経営がこれからの社会に果たす役割

福島:

住友電工の環境経営からは、社会に対してどのような貢献をするのかがあまり見えてきていない、という点についていかがでしょうか。


松友:

自分たちが持っている技術をどう社会に貢献させていくかという議論に、これまで環境部門が参加することはありませんでした。今後は、研究開発の段階から、たとえば低炭素社会に対するスタンスをどうしていくかといった形で入り込んでいくことも考えたいと思います。


得田:

素材メーカーなのでどうしても一番意識するのがお客さま。お客さまの視点を通して社会へ、と考えてしまいがちです。研究開発については2010年に設立したNEXTセンターで、新しい事業領域の提案とともに必要な基盤技術の獲得のための探索研究を行っています。すでにお客さまとの接点である営業部門が議論に参画していますが、社会との接点として環境部門が参加できるようCSR推進室としてもバックアップしていきたいと思います。

得田

経営計画との関係や目標設定、バウンダリーについて

福島:

長期的な取り組みについて。住友電工の環境保全活動の中核をなす「アクションECO-21」のフェーズIV、これは2012年までとなっています。この期間設定をどう思いますか。また目標設定における総量目標と原単位目標の関係について、皆さま方のご意見をお聞かせいただければ。

福島

上妻:

企業の経営計画はどんなに長くても10年。経営計画がそのような期間設定であるのに、環境だけが超長期的に作れることはないでしょう。


森澤:

社内の長期目標として、総量目標、原単位目標どちらを優先するかは企業の戦略で、どちらでもいいと思います。しかし開示については、総量目標に加えて原単位目標の双方を是非開示して頂きたいと思います。なぜなら、原単位が出ていれば、後発の中国やインドなどの企業と比較して、御社の優位性がアピールできるかもしれません。


田中:

御社のように事業領域が広い場合、原単位は分母を何にするかが難しいのでは。期間設定は現在の経済状況を考えると3年が見通せる限界ではないでしょうか。


松友:

総量と原単位の件。それぞれ目標設定しています。ただ、原単位目標については、生産部門に限って設定しています。オフィスやSF6に関しては総量にするべきと考えています。総量の増減には様々な原因が考えられるので、現場レベルでは総量で評価するのは厳しい。活動そのものは原単位で評価しています。

松友

野田:

会社全体の中期計画とリンクした環境経営ということで、「2012VISON」と「アクションECO-21」は一致しているのです。2012年が環境経営にとっても到達点です。リーマンショックで大幅にずれたところもありますが。環境やものづくりの活動は経営にリンクしているのです。次期の中期計画も内部的には検討をスタートさせていて、各部から委員を出して、具体的な議論が始まっています。


福島:

バウンダリー※について、財務連結範囲との整合などの論点がありますが、それについてはいかがですか。


森澤:

排出量報告バウンダリーには財務管理、業務管理、株式保有等がありますが、財務管理の範囲での報告を選択される場合にはCDPでは連結での報告を推奨しています。


上妻:

連結範囲の中で、実態としてどれくらい環境負荷をカバーしているのか開示してほしい、というのがもともとの発想です。バウンダリーも重要ですが、スコープ※の問題もあり、これからはもっと重層的に開示の範囲が広がってくるように思っています。


※バウンダリー
報告の対象となる組織

※スコープ
報告内容範囲のことであり、バリューチェーンにおける範囲をいう

海外における環境経営の拠点づくりについて

松友:

海外の環境法規制を把握するのが難しいと感じています。中国版のチェックリストを作るのに1年かかりました。中国は何とか形にはなりましたが、今後は東南アジアです。調査の指示は出しましたが、どこから手を付けていけばいいのか悩むところです。


田中:

トヨタでは地域統括会社等に環境担当・情報収集担当がいて、本社に情報が集まるようになっていますが、基本的には各国・地域で完結することを目指しています。


野田:

当社でも安全の監査は比較的進んでいます。そこで得た知識を環境や品質に落とし込んでいっています。拠点づくりに関しては、地域ごとに生産技術本部という形で行うように考えています。中国は2拠点、ASEANにも1拠点。少人数ながら専門部隊を置いていこうという考えです。


小原:

言葉が通じないので、教育は動画を使って行っています。危険予知活動なども現地の言葉にして、共通レベルに少しでも近づけようとしています。国々によって人々の感性も違うので、なかなか困難ではあります。

小原

住友電工グループの今後の環境経営への期待

田中:

環境と経済の両立が基本ですが、アクションプランなど、社会との共生ということでもう少し御社のカラーが出てくるとさらに広がりが出て来てよいのではないでしょうか。社会からの御社への期待はとても大きいのですから。


森澤:

創業100年を超える御社は、日本の高度成長を担ったトップランナー的存在でもあるわけです。アジアの企業に対して、これからリーダーとして環境の面からも引っ張っていただきたいと思います。


上妻:

CRFのような、先進的な取り組みをちょっとずつ進めていただきたいですね。グローバルな環境規制についての対応強化などは、行政に働きかけて協力を得ることも必要かもしれません。


野田:

限られた時間でしたが、各分野の第一線でご活躍中の方々から色々とご意見をいただき、「なるほど、そう考えていいのか」といった気づきが随所にありました。ぜひともこれからの活動に活かしてまいりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

野田

野田 茂 常務取締役
野田 茂
常務取締役
ステークホルダー・ダイアログを終えて

経営の最重要課題の一つとして取り組んできた環境経営ですが、社外の有識者・専門家の方々との交流は非常に有意義でした。CRFや他社との共同モーダルシフトなど思いがけず高く評価して頂いた点については、ますます注力していきたいと思います。当日いただいたご指摘やアドバイスについては、基本姿勢に関わるものやバウンダリーの問題など一朝一夕には改善できない大きな課題もありますが、適切かつ分かりやすい情報開示のあり方などについては、早速今年度のCSR報告書でも可能な限り対応したいと思います。今回改めて意識を深めた、社会との共生やグローバルな視点からの取り組みを具体的に検討し、環境経営の拡充・強化に取り組んでいきたいと思います。

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