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2009年 研究開発篇

SEI CSR EYE 事業を通じた社会への貢献 研究開発篇

新しい価値創造を目指す、あくなき挑戦。

事業を通じた社会への貢献、その原動力としての研究開発。

住友電工は、電線・ケーブルの製造技術をベースに独自の新技術・新製品を創出することで「電線・機材・エネルギー」「情報通信」「産業素材」「エレクトロニクス」「自動車」へと事業分野を拡大し、広く社会に貢献してきました。こうした事業展開を可能にした基盤には、研究開発を重んじる企業風土があります。住友事業精神に「技術の重視」とあるように、当社は創業当初から研究開発こそが企業の持続的発展の原動力であると考えてきました。 世界は、地球温暖化、資源・エネルギー問題、食糧危機・水不足、高齢化問題など大きな転換期を迎えています。グローバル社会の持続的成長に少しでも貢献できるよう、研究開発力の強化に取り組んでおります。

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独自技術の開発で社会インフラの発展に貢献してきた歴史。
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吉海 正憲
常務執行役員
研究統轄部長

私たち研究開発部門の役割は、一言で言えば『新しい価値創造への挑戦』です。すなわち、社会の変化・技術の動向(ニーズ)を先取りし、住友電工グループの強みである材料技術・情報通信技術(シーズ)を融合した独創的で優れた新技術を創出することで新製品・新事業へと発展させ、豊かな社会づくりに貢献することです。

当社は電線メーカーとして出発し、電力、通信をはじめ、一貫してわが国の社会インフラの発展に貢献してきました。例えば通信分野での、電気通信(銅電線)から光通信(光ファイバ、化合物半導体)への転換など、常に時代の先をいく製品の開発を実現してきたのは、研究開発を重視する社風があってこそです。

事業の多様性から生まれるオリジナリティある新技術。
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WinD Lab(ウインド ラボ)外観

中期経営計画『12VISION』を達成するためには、5つの事業分野に加えて新たな事業領域への発展が必達であり、具体的に「環境・資源」「ライフサイエンス」「安心安全・ユビキタス」を掲げています。こうした新分野での事業展開を成功させるためには、これまでは別々の事業分野に属していた研究成果を統合し、新たなコア技術を創出するという横軸の展開が必要です。

また、既存のモデルにとらわれない提案型の研究開発の重要性も認識しており、こうした構造変化に対応しうる研究体制の整備を強力に推進しています。その象徴とも言えるのが、今年5月に大阪製作所内に竣工した新たな研究本館「WinD Lab」です。これまで大阪製作所内で分散していた研究部門が集結することで、事業部門を超えた連携や研究者間の交流が促されています。

共同研究の推進。

大学や国立研究所など外部の研究機関との連携も活発に行っています。2005年5月には、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)との間で包括的な協力協定を結び、基礎研究から産業技術人材育成まで広範な連携を目指した共同研究の先駆的モデルとして大きな注目を集めました。具体的には、2005年度から毎年数件の共同研究プロジェクトを設定し、ポスドク[※]を中心に即戦力人材の育成と産総研の知的財産やノウハウの迅速な技術移転を目指すものですが、実際に当社の研究員として正式採用した事例も出はじめています。

※ ポストドクターの略で、博士課程を修了している、常勤雇用される前の若手の研究者のこと。多くは大学・公的研究機関などで非常勤職員として雇用され、わが国の研究活動を支えている。

研究の着地点をマネジメントする体制も。
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マグネシウム合金
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純緑色半導体レーザ

住友電工はこれまでも長期的な視点を大事にしてきた会社です。化合物半導体や超電導などを例にとってもわかるように、20年、30年という息の長い基礎研究を経て事業化を実現させました。またその研究価値を反映させられる経営体制を持っています。

しかしながら、企業の研究開発は、やはり事業主体で常に成果を問われるものが中心となります。例えば“3年先の収益が見越せるもの”という制限があれば研究者自身が長期ビジョンに立つのはなかなか難しい。そこでマネジメントチームが一歩離れた場所から、全社的な戦略で研究開発を誘導していくことも大切になります。30年後の社会をデザインし、予測される社会経済構造からバックキャスティングして研究の長期ビジョンを用意するということです。例えば、近い将来、環境問題を含んだエネルギーの変革は避けられない。そこには当社の技術や製品が活躍する場があるでしょう。また、目前に迫った高齢化社会の到来を考えてみた場合、現在の当社の活動領域ではないところに新しいビジネスの芽があるのではないか。私たちが得意とするコア技術が未来の社会に役立つのではないか、といったようなことです。

優秀な研究者の発想を大切に育てる環境に加え、私たちのマネジメント力によって、研究のスピードアップと効率化を図りながら、創造力を発揮した研究開発により既存事業領域の基盤強化と新規事業領域への展開を推進する。そのための体制固めを着々と進めています。

送電ロスがない「超電導線材」が環境に貢献する未来。
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電力・エネルギー研究所
薄膜超電導線グループ
工学博士 大木 康太郎
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薄膜超電導線材

産総研が開講する「イノベーションスクール」1期生として2008年10月から半年間、住友電工でOJT[※]を受けました。それまで大学・産総研で経験してきた研究生活ではオリジナリティにこだわってきましたが、企業での研究は製品化というゴールがはっきりしています。製品として世に出すことの醍醐味を知り、次の研究ステップとして企業に入ることを選択しました。

私が研究しているのは「薄膜超電導線材」で、5〜10年後の実用化へ向けて開発を進めているところです。超電導は送電ロスのない究極の材料で、電線として暮らしに定着すればスピードやエネルギー効率のアップ、材料の低減などで環境に大きく貢献できます。

大学から一貫して超電導の研究を続けていますが、現在身のまわりに存在しないものや特性を扱い、未来の社会に貢献できるところに大きな魅力を感じています。まだ完成されていない分野、前例のない革新的な仕事に取り組むことにやり甲斐を感じます。

※OJT(On-the-Job Training)  日常業務の中で行う教育訓練のこと。業務を一時的に離れて行う研修や教育はOff-JT(Off-the-Job Training)と呼ぶ。

※2009年7月取材

※「研究開発」の詳細につきましてはこちらをご覧下さい。研究開発

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