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プレスリリース 2014年

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電気学会 電気学術振興賞(進歩賞)を受賞

2014年6月25日
住友電気工業株式会社

「レドックスフロー電池システムの開発」、「国内初となる高温超電導ケーブルの電力系統での実証運転の成功」、「超高圧直流架橋ポリエチレン電力ケーブルの開発と実線路適用」のテーマで、当社の筒井康充、重松敏夫、柴田俊和、芦辺祐一、子会社の株式会社ジェイ・パワーシステムズ(以下「JPS」)の片貝昭史らが社団法人電気学会の第70回電気学術振興賞 進歩賞を受賞しました。

「電気学術振興賞(進歩賞)」は、1942年に創設された伝統ある賞で、電気に関する学術・技術に於いて新規な概念・理論・材料・デバイス・システム・方式等を新たに提案或いはこれ等の提案を実証した者、および電気に関する製品・設備等を新たに完成又は改良し、顕著な成果をあげた者に与えられる賞です。

今回の受賞内容は下記の通りです。

①筒井 康充、重松 敏夫、柴田 俊和(当社)

「レドックスフロー電池システムの開発」

図1.耐熱FPCの断面構造(片面・両面板)

当社は、1985年から2008年まで関西電力(株)と共同でレドックスフロー電池(以下、RF電池*1)の開発を行ってきました。地球温暖化に伴う低炭素社会への指向、原子力発電所事故に端を発した電力供給構造の変化を受け、国家レベルで再生可能エネルギーの導入が推進されるようになり、これに伴い、不安定な電源の安定化対策として大規模な電力貯蔵用電池の導入が強く期待されるようになりました。

受賞者らは、この用途に向けて、新たに電極・隔膜・双極板等の電池材料の開発、およびスマートグリッドへのRF電池適用のシステム開発等を進めてきました。2011年には小型風力・太陽光発電と2kW/10kWhのRF電池からなる直流マイクログリッドを構築し、2012年からは100kW太陽光発電と1MW/5MWhのRF電池を組み合せて工場系統に接続し、FEMSとしての制御実証も含めて、実規模システムでの検証を実施し、成功しました。これらのRF電池システムの開発は、材料からシステム開発、制御実証に至る長年の研究開発に基づく成果であり、本受賞は、RF電池のみならず大規模蓄電池の実用化に向け、貢献したことが評価されたものです。

②大木 義路氏(早稲田大学)、佐々木 英隆氏(電源開発)、片貝 昭史(JPS)

「超高圧直流架橋ポリエチレン電力ケーブルの開発と実線路適用」

近年、長距離・大容量送電に有利な直流送電線路が欧州等で活発に建設されています。これらの線路には、絶縁油を用いたMI/OFケーブルが主に用いられてきましたが、保守管理、経済性や環境面から、固体絶縁である架橋ポリエチレンケーブル(以下、XLPEケーブル)の適用が望まれるようになりました。ところが、XLPEケーブルは、絶縁体中に空間電荷が蓄積するため、高温運用や極性反転*2した場合に絶縁破壊*3が生じやすいという問題があり、許容温度70℃以下でかつ極性反転を加えないという、限られた条件下での運用しかできないとされてきました。

この問題に対し、受賞者らは、材料・設計・製造・布設など総合的に技術開発を行い、微量の無機成分を絶縁材料に添加することにより、絶縁体中の空間電荷蓄積を抑制した超高圧直流XLPEケーブルの開発に成功しました。本超高圧(±250kV)直流XLPEケーブルは、北海道・本州連系という重要送電線に採用され、海底部及び陸上部の約45kmに本ケーブルが布設されました。また、導体許容温度90℃の連続運転、±250kV の運転電圧、極性反転への対応など、いずれも世界初のXLPEケーブルシステムです。日本が世界に先駆けて本システムを実用化できた意味は極めて大きく、今後の洋上風力発電など遠方からの電力輸送や電力の地域間連系等の推進にも多大な貢献をもたらすものと期待されています。

左から佐々木氏(電源開発)、片貝氏(JPS)、大木氏(早稲田大学)
③三村 智男氏(東京電力)、下田 将大氏(前川製作所)、芦辺 祐一(当社)

「国内初となる高温超電導ケーブルの電力系統での実証運転の成功」

NEDOの「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」において、東京電力株式会社(以下、東京電力)と株式会社前川製作所と当社は、ビスマス系高温超電導線材を用いた三心一括型高温超電導ケーブルと、液体窒素循環冷却システムを開発し、これらを組み合わせた高温超電導ケーブルシステムを、東京電力の旭変電所(神奈川県横浜市)内に設置し、電力系統に接続した超電導送電の実証実験を、国内で初めて実施し、2012年10月末から2013年12月末までの1年2ヶ月にわたり約7万世帯に電力を安定供給することに成功しました。

本実証試験では、当社の高圧下加熱焼成技術を活用したビスマス系超電導線材(DI-BSCCO®)を用いており、超電導ケーブルの定格電圧は66kV、通電可能な電流は3000Aと、同サイズの従来ケーブルと比べて5倍以上の送電容量を有しています。ケーブル長は240mで、途中一か所に中間接続部を持ち、両端は気中終端接続部を有しています。電力系統への適用にあたっては、短絡電流解析や雷サージ解析、事故発生時の保護リレー検討に加え、連続運転中の監視・警報システムの設置などの対策により、既存電力機器・システムとの融合を図っています。冷却システムは、冗長性を考慮して、2台のポンプと6台の冷凍機により構成され、ケーブル熱負荷に応じて冷凍機台数を増減する台数制御方式を設計・適用しています。また冷却システム運転中にポンプおよび冷凍機を交換するメンテナンス技術を検証しています。

このように本実証運転では、さまざまな新規技術を導入するとともに、将来の実適用を明確に意識したシステムを構築し、長期安定運転を実証することができ、高温超電導ケーブルの実用化を加速するものと評価されました。

当社はこれからも、新しい技術の発展に貢献できるよう、研究開発・製品開発に取り組んでまいります。

*1 レドックスフロー電池:

バナジウムなどのイオンの酸化還元反応を利用して充放電を行う蓄電池であり、充放電を行う入出力部と金属イオン電解液を蓄えるタンクから構成されます。充放電を頻繁に繰り返しても電極や電解液の劣化は殆どないため長寿命であり、正極と負極の電解液が同じ物質であることから、メンテナンスが容易です。また、発火性の材料を用いていないことや常温運転が可能なことから安全性も高い蓄電池です。不規則で変動の激しい充放電運転に適し、貯蔵電力量の正確な監視・制御が可能なことから、夜間の余剰電力の活用に加え、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの有効活用に適した蓄電池です。

*2 極性反転:

運用の状況に応じて、電圧のプラスとマイナスを入れ換える操作。

*3 絶縁破壊:

絶縁体にかかる電圧がある限度を超えた場合に、絶縁性を失って電流を流すようになる現象のこと。

以上

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