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2009年 製品篇

SEI CSR EYE 事業を通じた社会への貢献 製品篇

災害復興プロジェクトの早期完成のため奔走した88日。

ミシシッピ川に復興の架け橋を築くまで。

ミネソタ州ミネアポリス市のミシシッピ川に架かるHighway I-35W橋梁が、2007年8月1日突如崩落し、多くの死傷者を出しました。ミネソタ州運輸局は、2008年12月の完成を目標に、橋を再建する「緊急救援プロジェクト」を設立。新しい橋梁は、大荷重に耐え、100年の耐用年数を持つPC(プレストレスト コンクリート)橋と決定され、住友電工の米国子会社であるSWPC社のPCストランドが採用されました。当初は2008年10月までに納入する予定でしたが、少しでも早く橋を復旧させたいと願うミネアポリス市民や利用者の思いを受け、SWPC社では生産・出荷体制を組み直し、関係各社のご協力のもと、2008年5月までに全量納入を果たしました。

SWPC Sumiden Wire Products Corp.

1979年、住友電工の最初の米国製造子会社として設立。米国カリフォルニア州、テネシー州の2拠点で建築、橋梁関連のPCストランドとばね用ステンレス鋼線の製造・販売を行っています。

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全米が待ち望む工事に貢献したかった。
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ジョン・コーネリアス

ミネアポリス市の中心地を走るこの橋は、崩落当時、1日14万台を超える交通量がありました。崩落による交通の分断で、ミネソタ州は1日当たり11万3千ドルの損失を被ったと言われます。このダメージを早急に食い止めるため、緊急のプロジェクトが立ち上がりました。

SWPC社のゼネラル・マネジャーであるジョン・コーネリアスは「世間からの注目も高い、国益に関わるプロジェクトでしたが、会社としては、この仕事を受けるべきか慎重にならざるを得ませんでした。もし予期せぬ品質問題などが起これば大問題ですから」と当時を振り返ります。しかし、彼は橋の再建にぜひ関わりたかったと言います。「地元住民が感じている心の喪失を埋めなければならないという使命感、失われた人命への思いを表したかった。全米どころか世界が注目しているこの工事に参加することは、会社の歴史にとって素晴らしいことです。それに、プロジェクトをやり遂げるだけの実績と自信もありました」。

2008年1月8日、SWPC社は正式に契約を勝ち取り、ディビダーグシステム社から1,560トンのPCストランドの注文を受けました。この時点では6、7カ月かけて出荷する予定でした。ところがこの後、思いもよらぬ問題が発生します。

立ちはだかる壁、短納期プロジェクトへの対応。
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PCストランド
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スティーブ・コック

3月はじめに告げられた納期は「3カ月以内」というものでした。災害復興に関わる事業だったため通常の倍のスピードで臨むことになったのです。しかし折り悪く、PCストランドの原材料・炭素鋼線材は世界的な供給不足の真っ只中で、他のお客さまとの調整が大きな問題となりました。

「すぐさま他のお客さま向けの3月から8月までの納品スケジュールを組み直した」と語るのは営業マネジャーのスティーブ・コック。「その間、何十時間にもわたって電話で話し、粘り強く納期の調整を行いました。期間中は記録的な出荷量となり、担当者の仕事量は目を見張るものでした。テネシー工場だけでは生産が追いつかず、輸送コストの面では不利でしたがカリフォルニア工場からも出荷し、足りない分を補いました。結果的に、オーダー通り3カ月以内、88日で全量納入を達成。他の大事なお客さまの納期を遅らせることもありませんでした」。

発注元であるディビダーグシステム社のビジネスユニットマネジャー、デーヴ・マーティン氏からも「SWPCはとても信頼のおけるサプライヤーでした。過去に例がないほどの短期間での橋の完成は、彼らの真摯な対応がなければ成し遂げられませんでした」とのコメントをいただくことができました。

サプライヤーとの絆で緊急時を乗り越えた。

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海外からの原材料調達が厳しい中、タイトなスケジュールをこなすことができたのは、国内サプライヤーとの信頼関係が築けていたからだというジョン。「他の高収益な仕事を選ぶこともできましたが、社内、社外スタッフ全員が、社会的信用を何よりも重視する住友事業精神を理解し、納期を絶対に守るためにチームワークを発揮しました。このような緊急体制のプロジェクトを乗り越えたことで、会社に良い前例ができました。成し遂げた仕事や、自分が率いるチームを誇りに思います」。

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ジェニファー・パーカー

お客さまとの信頼関係を重視する姿勢はSWPC社内に浸透しています。

「2008年から2009年にかけては、金融危機と世界不況に見舞われた時期でもあり、お客さまの多くが資金面で困難に直面し、私たちに柔軟な対応を求めました。」と語る与信管理マネジャーのジェニファー・パーカー。「与信管理部門では、誠実にお客さまの要望を汲みながら、クレジットリスクを最小限に留めるよう懸命に取り組みました。お客さまとともに困難を切り抜けることで信頼関係が育まれ、それがSWPCの成長と繁栄につながることを全員が理解しています」。

SWPCは米国のメーカーとして定着している。
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SWPC社長 佐野 裕一

SWPCの佐野社長は「創立30周年を迎えるわが社は、今や米国企業として認識していただいており、SUMIDENブランドのファンも沢山います」と力強く語ります。「若い米国人マネジメントチームが主役の会社ですが、お客さまとの信頼関係を大切にするなど、一般的な米国企業とは異なる社風が根づいています。“社会のため、いい製品を世に送り出したい”という信念が品質にも良い影響をもたらしています。特に、大型橋梁用など品質要求水準の高い用途で当社製品が採用されています。今後も医療用ステンレスワイヤー等の新事業を通じて社会に貢献していきたいですね」。

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高付加価値の技術で、PCのスタンダードを上げたい。
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高椋 晴三
常務執行役員
産業素材事業本部副本部長 特殊線事業部長

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バイチャイ橋

PC(プレストレスト コンクリート)とは、PC鋼材を用いてコンクリートに高い圧縮力を与えて、高強度・高耐久のコンクリート部材を実現する技術です。近年PC技術の進歩は目覚ましいものがあり、従来使用されていなかった超大型橋梁にもPC鋼材を使用するケースが増えてきています。また、沿岸部に建設される橋梁を中心に高い耐食性を要求されることも多いため、従来の汎用品に加えて、エポキシ被覆や亜鉛めっきとポリエチレンの複合被覆等を行った防食鋼材の開発・拡販も積極的に行っています。こうした被覆技術は、住友電工が長年培ってきた電線ケーブルの被覆技術をPC鋼材に応用して生まれたものです。

SWPC社をはじめ当社グループのPC事業は、汎用品を大量に生産・販売するだけの他社とは一線を画し、世界的にもユニークなメーカーとしてお客さまから高い評価をいただいています。

最近では、米国カリフォルニア州のベイブリッジ、ドバイのモノレール、ベトナムの世界遺産ハロン湾に架かるバイチャイ橋など、モニュメンタルな構造物への採用が続いています。私たちの技術が世界の橋梁の信頼性向上や長寿命化に貢献していることを誇りに思います。

※2009年7月取材

※「PC製品」の詳細はこちらをご覧下さい。住友電工スチールワイヤー(株)

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